『内臓力を高める「ゆる」呼吸法 高岡英夫』

内臓力を高める「ゆる」呼吸法 (ベスト新書)

内臓力を高める「ゆる」呼吸法 (ベスト新書)

高岡氏の著作は一通り、興味を持って読んできたが、最近内臓についての関心があり、リンクする形で買ってみた。そもそも、内臓に関する関心は、西原克成氏の著作「内臓が生み出す心」などの提示する世界観が自分の中で成熟するとともに深まってきていた。
現代の脳中心の世界観からすると、著作の表題からし似非科学では、トンデモではとの疑念を抱く御仁が多かろう。私の中学の頃の生物の先生が、とても個性的な先生であり、そのインパクトのおかげか、生物の系統発生、内肺葉、中肺葉、外肺葉などの区分や腔腸生物、原核生物など、今でもパラパラ思い出せ、私にとっては肺葉という発想は馴染みのあるものだ。

西原氏の主張は、内蔵こそが、生物の系統発生上では内肺葉系から分化したものであり、より原始的(根源的)な部位であるとし、脳中心の現代医学に真っ向から対立する視点を提示している。例えば、顔は内肺葉系から分化したものであり、顔が心を表す、内臓の意を表出するのは当然であり、「女は顔で選ぶ、レベルが低いね。」などという男はまったくのあほであり、セックスという内臓同士が擦れ合う運動の、意は内臓から発し、その表出たる顔が重視されるのは当然なのだ。

それに対し脳とは外肺葉系の分化であり、感覚器の高度化といえる。触覚が高度になり、分析的になったぐらいに思えばいい。現代人の常識からすれば、脳が人間の統合センターであり、脳の死が人の死とされる(脳死)ぐらい、脳中心主義は強固である。

脱脳中心主義は、詳しくは西原氏の著作に譲るとして、私は自らの武術等への関心からも、丹田、胆というものが大きな役割、意念の中心ではとの感覚があった。脱脳中心主義と、また内蔵力強化が、気持ちのいい生き方の鍵ではという、実用本も期待しての本書購入であったのだ。

高岡氏の主張を列挙する。

・現代人は手足を動かすことが運動だと思っているが、体幹の運動が大事だ。
・動物の系統発生からすれば、魚、爬虫類といった原始的な生物の動きこそが、根源的な運動だ。
・その根源的な動きは、魚なら背骨を揺らす、波打たせる波動運動だ。
体幹内の運動は、呼吸運動と密接な関係を持つ。
・筋肉がこわばらず、揺れながら、気持ちよく波打つとき、最高のパフォーマンスが得られる。
・それには、言葉による暗示、「気持ちよーく」、「ふわー」(擬音)が大切だ。
・サモン(印、指、手の表出機能)を使って、さするということを最大限使い、大脳への認知をフィードバックさせつつ、筋肉を緩めることが効果的だ。
・ひざコゾコゾ体操はお勧めだw

原則としては魚の運動、波の運動が効果的。暗示、さすりを用いて、大脳へのフィードバックを行う。この二つの原則を押さえれば、応用が可能になると思う。アイデアは十分であるから、日常的な実践が問題である。緩みの本質とは、大脳による交感神経的なアプローチに拠らず、副交感神経的で原始的な、魚にまで戻った、感覚で動くということであろう。