『第三の脳』傳田光洋著
- 作者: 傳田光洋
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2007/07/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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まず脳中心主義の転換。これには発生生物学、ゲーテ、三木成夫、西原克也の流れの思考がある。発生における胚、内肺葉、中肺葉、外肺葉などを、虚心にニュートラルに観ていく思考だ。
その系譜に、傳田光洋を加えてもいいのだろう。
まずは、箇条書きマトメ。
・皮膚は1ミリの100分の一を識別する、女性が比較上は敏感。
・皮膚は臓器、境界条件。
・皮膚の免疫、まずは表皮のランゲルハンス細胞。
・表皮を構成するケラチノサイトに、免疫システムを作動させる、TO11様受容体の存在。
・表皮の物理バリア、免疫作動、抗菌ペプチドの生産
・皮膚表面温度の上昇と、バリア回復機能の活性化
・表皮にTRP分子が存在、神経ではなく、表皮ケラチノサイトに存在するTRP分子の重要性。皮膚における、自立的認知(識別能)
※神経における認識、中枢神経の、中央主権というセントラルドグマへの挑戦
※詳細 篠田裕之氏『皮膚の力学的構造に隠れている知能』、システム情報学からの視点。
・皮膚は光の三原色に異なる応答をする。バリア回復応答が異なる。情報識別、弁別を行っている。簡単に言うと、光を感覚している。
ここまでは皮膚における感覚、認知の具体的発見を列挙。
重要な視点が、神経システムについて。
・神経系はデジタルなシステム。
・細胞内がマイナス電位、これをOFF 細胞膜内外で電位差0をON
・これがデジタル神経情報システム
・オンオフ転換は、細胞膜へのイオン流入
・オンオフを切り替えるスイッチ(ネットワーク用語)が受容体
・今までの常識、受容体は神経伝達物質で作動(鍵と鍵穴)
・皮膚表皮のケラチノサイトには、温度、圧力、浸透圧で作動するTRP受容体
・ケラチノサイトもオンオフを表示する。
・情報ネットワーク、デジタル信号のネットワーク、脳神経系と表皮系も
・嘘発見器は、表皮の電位変化を利用
・表皮の電位感受性カルシウムチャネルの存在(サイバネティックな制御システム)
・生体の界面電気化学、マグネシウム塩水溶液との接触による、電気現象
・表皮におけるカルシウムイオンの観察結果 カルシウムイオンの濃度変化は、非線形科学における、結合振動子の発見 自己組織化の情報伝達システムの存在
・イオンポンプとは、ATPを消費して、イオンの流れを作る分子機械
・アイソレーションタンクにおける姿勢制御、筋感覚と皮膚感覚が自己意識の発生に影響
・電気的なシステム制御は、発生の過程で貫徹 経絡論?
・低周波電波の遮蔽物の透過性 皮膚におけるカルシウムイオン濃度変化の結合振動子による低周波電波の惹起?
※電磁場と生体についての研究例 『電磁場生命科学』宮越順二編著
・弱電気魚における、生体電場
・表皮で合成される、神経伝達物質、サイトカイン等
・表紙への刺激、電位変化、神経伝達物質への影響
・ケラチノサイトで合成されるサイトカインは血液脳関門を通らない。情動変化が、脳ではなく、腸などで起こっていたら?皮膚と情動
※接触における、セクシュアル・ヒーリング BY マーヴィン・ゲイ
ここから、ちとトブハナシ。
・熱力学第二法則 エントロピー増大則が働く系は、閉じた系。これは因果律の世界。
・渡辺慧氏の提言 生命におけるエントロピー増大則に抗する作用。非因果的決定。
・暗黙知と皮膚感覚、皮膚認知(非言語的、末梢的識別)
全般的な感想。
革命的な著作であることは、間違いない。電気システムとしての人間。境界条件、皮膚の重要性。非言語的な感覚、認知、識別の重要性。生体電場。まあ、ぎっしり、今後の生命科学の方向性が詰まっているといえよう。
羅針盤として、十分である。