『隼人の研究』 中村明蔵著
- 作者: 中村明蔵
- 出版社/メーカー: 丸山学芸図書
- 発売日: 1995/12
- メディア: 単行本
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本書は鹿児島の古代史研究家の中村明蔵氏の著作であり、氏の隼人研究の原点である著作である。以下でその要旨をまとめてみる。
まずは熊襲と隼人について述べられる。記紀における記述上の位置づけでは熊襲とはあくまでまつろわぬものに与えられた名称であり、隼人とは大和王権に服属したものの名称である。
南九州は、大和王権からすれば蛮族の地となってしまうのだが、現在の鹿児島では大隈地方、贈於地方、薩摩地方に隼人族がいたとされる。
現在の宮崎県では諸県群、児湯郡において天皇家へ嫁ぐ氏族がいて、日向髪長姫が仁徳天皇に嫁いだとされる。
日向においては、大和王権と融和し、隼人においては大和王権に服属し、熊襲においては最後まで抵抗したとされる。
史書での扱いだが、古事記における神話的記述においては山彦を天皇家の始祖、海彦を隼人の始祖とし、両者が争いあい、最終的に山彦に海彦が服属し臣下となる。鹿児島に伝わる隼人舞は海彦の、海で溺れるしぐさ等の入った舞であり、この征討のさまを表しているのではとされる。
日本書紀においては征統記という形で記述される。景行天皇の景行記はいかにして南九州を征討したかの記述である。
社会制度的にみると、隼人は、大和における政治的秩序、律令国家への組み込み、公民化の過程にて、主に軍事的な職を与えられた。そして彼らは畿内への強制移住をさせられる。
私見 これは、彼らを根っこから引き剥がし、弱体化するための策であったのではなかろうかと思う。強制移住ということも、またなにやらユダヤ人の故郷追放にもにた、悲劇の響きを感じる。
また特に、彼らは呪術に優れていたとされ、吠声(ハイセイ)という犬の鳴き声を用い、鎮魂等の儀式を行ったとされる。また機内へ移住させられた彼らは、犬飼、犬養などの名を語ったいう。
私見 犬のシャーマニズム。ここにひっかかりと魅力を感じる。当時どのような儀式を行っていたか、吠声とは具体的にどのようなものか。狗奴国とのつながりも感じる。犬や猿の武術、シャーマンに個人的な関心がある。自分の身体を通じて、彼らの行動やココロを追体験したら、面白かろうと思う。この読書もまた、その材料集めの試みである。書評というよりは、本書の要旨と、なぜ私が隼人に興味を持つのか表明してみたかったのでR。