論文評『グリア細胞によるシナプス伝達制御−細胞外ATPの役割−』小泉 修一 井上 和秀
http://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/123/6/389/_pdf/-char/ja
<要約>
・神経膠細胞(グリア細胞)は、ヒト脳ではニューロンの10倍
・グリア細胞存在比はヒトが圧倒的に高い
・グリアとは、糊(glue)様細胞
・グリア細胞がニューロンの活動をダイナミックに制御しているとして注目
・グリア細胞で最大数を占めるアストロサイト
・アストロサイトは、ほとんどすべての神経伝達物質受容体を発現
・ニューロン活動に応答して液性因子放出能を有する
・ニューロン−アストロサイトの協力で、所謂シナプス伝達が成立
・アストロサイトが放出する液性因子“ATP”
・刺激依存的に放出されたアストロサイト由来 ATP が、海馬ニューロンの興奮伝達を抑制性に制御
・アストロサイトは自発的 ATP 放出能を有する
・星状を呈することから命名された星状膠細胞“アストロサイト”
・グリア細胞-ニューロン間の積極的なコミュニケーションが脳機能のダイナミズムに重要
・脳内グリア細胞は大きく分けて3種類
・星状神経膠細胞(アストロサイト)
・乏突起神経膠細胞(オリゴデンドロサイト)
・小神経膠細胞(ミクログリア)
・アストロサイトは活動電位を発生しないが、巨大なネットワークを形成し、細胞内および細胞間に伝播する“Ca2+wave”を介して互いにコミュニケーション
・細胞内 Ca2+濃度([Ca2+]i)上昇が,時間・空間的にずれながら波のように細胞内および細胞間を伝わる現象
・ATPが放出され拡散することがCa2+wave形成に中心的な役割を果たす
・ATP受容体拮抗薬のsuramin は、このCa2+wave 伝播を消失させる
・ATPを介するgliotransmissionはグリア細胞ばかりでなく、ニューロンの Ca2+動態さらにはニューロンの活動に影響し得る
・ATPはアストロサイト-ニューロン間の液性情報伝達物質として働き,シナプス伝達を極めてダイナミックに抑制
・ATP をパートナーとしてアストロサイトが脳研究のスターになりつつある
<評>
グリア細胞、アストロサイトがATP放出により、液性情報システムとして作用か。
ニューロン発火は、電位によるものかな?
また海馬が、大きな脳調整機能を果たしている可能性も。
カルシウムイオンウェイブによる情報伝達も面白い。カルシウムイオン、カリウムイオン、イオンの電位差による情報伝達。
あとは細胞の電位の話もかのう。